細菌性髄膜炎とワクチン

細菌性髄膜炎は、いつもは鼻や喉にいる細菌が、脳の周りにある髄膜、髄液に感染する病気です。ひどくなると脳炎や後遺症(難聴や麻痺など)が怖い病気です。ワクチン導入前は、年間1000人の子どもがかかっていました。原因の70%がヒブ(インフルエンザ菌)です。その他に肺炎球菌が多く、10歳以上の年長児は髄膜炎菌も原因になります。

はじめの症状は、発熱や頭痛、嘔吐などの風邪でもみられる一般的なものです。その後、けいれんや意識障害などの神経症状のため、精密検査を行い診断をします。治療は入院の上、抗生剤やステロイドを使用しますが、髄膜には抗生剤が届きにくいため、治療がうまくいかないことがあります。後遺症なく治癒すればよいのですが、20~30%に後遺症がみられますし、急激に悪化する場合は死亡することがあります。

このように恐ろしい病気である細菌性髄膜炎は、私が医者になったころには年間何人も患者さんが入院する状況でした。髄膜炎に対してのワクチンは、日本には遅れて導入されましたが、その効果は絶大です。ヒブワクチンは、世界に遅れること20年、肺炎球菌ワクチンは10年遅れで、やっと日本で接種が始まりました。定期接種で生後2か月から接種を始めます。熱がでても髄膜炎は予防できるため、安心につながります。実際、定期予防接種になって細菌性髄膜炎は激減しました。私の経験ではここ10年間で入院する細菌性髄膜炎の症例はなく、若い小児科医は細菌性髄膜炎をみたことがないくらいです。それくらい細菌性髄膜炎にはワクチンは効果的です。ぜひ予防接種をしましょう。