小児腎臓病の森 No.3~IgA血管炎の遺伝学的特徴が報告されています

IgA血管炎は足や腕に赤紫色の斑点(紫斑)や、腹痛、関節の痛みを発症する病気です。5歳ころから小学校低学年まの小児に、特に風邪の後に発症しやすい特徴があります。基本的には良性の病気で、1か月程度で改善します。しかし原因がわかっていないことと、半数に腎炎を発症して慢性疾患になることもあるため、注意すべき病気です。年間10万人あたり10~20人が発症するといわれています。佐賀でも毎年患者さんが突然発症するため、皆さん驚かれます。これまでヘノッホシェーンライン紫斑病やアナフィラクトイド紫斑病など様々な名称で言われ、古くから知られている病気です。

今回、17歳未満でIgA血管炎を発症したフィンランドの患者46名の遺伝子多型を全ゲノムで解析(GWAS)して、正常集団(18757名)、他疾患集団(炎症性腸疾患49名)と比較した研究がなされました。(Pediatric Nephrology volume 36pages2311–2318 (2021) )

結果、IgA血管炎の患者ではHLAと言われるヒト白血球抗原に、正常や他疾患に比べて特徴があることがわかりました(HLA-DQA1*01:01/DQB1*05:01/DRB1*01:01)。

HLAとは、もともと白血球の血液型として発見された分子ですが、現在は白血球だけでなく、ほぼすべての細胞にあり、ヒトの免疫にかかわる重要な分子として働いていることがわかっています。様々な病気との関係もわかっており、糖尿病、潰瘍性大腸炎、川崎病などなどたくさんあります。
HLAの主な働きは、ばい菌を排除するため、ばい菌の情報を免疫細胞に伝えることです。そのためHLAに疾患の特徴があるということは、ばい菌を排除する免疫がうまく働かない可能性がでてきます。
IgA血管炎は、白血球が小さい血管を攻撃することで症状が生じます。つまり白血球がばい菌をやっつける働きから転じて、血管を攻撃した結果なのだろうと考えられます。その原因のひとつとして、HLAの違いがありそうなのです。

IgA血管炎とHLAの関連は以前から言われてきましたが、全ゲノムを対象としたGWAS研究はこの研究が2つめのようです。今回は以前の報告よりも詳細な結果が得られたようですが、調べた患者数が46名と少ないことと、腎炎合併者が多かったので、腎炎との関連ははっきりしませんでした。しかし、IgA血管炎が「免疫」の小さな違いで生じている可能性を言い当てている結果だと思いますので、さらなる研究を期待します。また西洋人の研究が多いようですので、日本人、東洋人での研究も必要ですね。