小児腎臓病の森 No.5 ~ 新型コロナウイルス感染症と小児腎臓

新型コロナウイルス(COVID‐19 )感染症は、小児では重症化しにくいとは言われていますが、集団でクラスターを引き起こすことは知られています。感染拡大の一つの原因にもなりうるため、小児のCOVID-19感染は重要です。COVID-19は肺などの呼吸臓器を侵して重症化するわけですが、実は腎臓にも障害を引き起こしやすいことがわかっています。小児の腎臓ではどのような障害を引き起こすのか、2例の報告がありましたので紹介します。Pediatric Nephrology volume 36pages3789–3793 (2021)

1例は10歳の女の子で、紫斑病性腎炎と診断され、4週間後に尿が真っ赤になりました。そのため腎生検(腎臓の組織の検査)が行われ、ステロイド治療がなされていました。しかしその後も改善がみられず、通常では見られない皮疹も出現しました。発症して7週後だったのですが、行われた検査では鼻からCOVID-19が検出され、COVID-19感染と診断されました。再度腎生検がなされ、腎臓の尿細管には上皮細胞に水泡やウイルスのような部位がみられました。ステロイドパルス療法や免疫抑制剤エンドキサンの治療がなされましたが、経過の改善はありませんでした。

2例目は12歳女児で、3週間前から筋力低下や体重減少がありました。また目のブドウ膜炎が1か月ありましたが、治療はされていませんでした。腎障害や低ナトリウム血症、尿糖などがみられ、、COVID-19抗体が高値の状態でした。腎生検では、尿細管間質性腎炎を認めて、ステロイド治療がなされました。

2例ともに難しい例ですが、COVID-19によって特殊な病気を発症しているとはいえないようです。腎臓の「炎症」という、ばい菌を排除するために体内で働く病態によって、腎臓病が引き起こされることが考えられました。COVID-19でよくみられる呼吸器の障害は、ウイルスが少なくなっても進行していくため、体の中でウイルスを除去しようとする免疫反応が強くなり、「炎症」の病態が制御できないことが言われています。小児の腎臓にも同様のことが考えられるため、COVID-19が腎臓にどのように作用するかを今後も調べていく必要がありますね。