小児腎臓病の杜 No.7~小児難治性ネフローゼ症候群の維持療法に免疫抑制剤MMFは効果的である

ネフローゼ症候群は、突然おしっこの中に多量の蛋白質が漏れ出ることで、むくみや血圧低下を引き起こす病気です。佐賀県でも毎年5人程度の子供が発症し、約40%が難治性ネフローゼ症候群になります。突然に発症しますので、皆さんは原因がわからずに困惑されます。現在は、リンパ球が腎臓を発作的に攻撃するためだろうと推察されています。治療薬は主に副腎皮質ホルモンで、他にもいくつかの免疫抑制剤を用いられてきましたが、効果が不十分な子供たちがたくさんいました。2014年本邦では、世界に先駆けてBリンパ球モノクローナル抗体(リツキシマブ)が保険適応になり、強力な治療が可能になりました。しかしリツキシマブは効果が一時的なため、その後の治療が模索されてきました。

ミコフェノール酸モフェチル(MMF)は免疫抑制剤の一つですが、まだ日本ではネフローゼ症候群に適応はありません。しかしMMFがBリンパ球の働きを抑えることから、リツキシマブ後の治療に有効と考えられてきました。今回、飯島一誠先生を中心に全国の施設が協力して、リツキシマブ後の免疫抑制剤にMMFが有効であると報告しました。詳細は神戸大学の発表をご覧ください。佐賀県からも多くの子供たちが協力してくれました。この場を借りてお礼を申し上げます。

MMFは腎臓移植に使用されている免疫抑制剤です。2005年当時の日本では小児適応はなく、適応外使用がなされていました。そのため私たちは、まず小児腎移植で使用できるようにデータを集め報告し、小児適応への手伝いをしました。小児ネフローゼ症候群で効果があると判断されれば、個人的には適応が広がることを期待しているところであります。