新型コロナウイルス オミクロン株感染症に対する小児科診療:院長雑感

2019年に発生した新型コロナウイルス感染症によって、この3年間世界はたいへん苦労をしてきました。かすがの杜こどもクリニックが開院した2021年10月は、デルタ株の第5波が終息した時期でした。同年11月に南アフリカから発生したオミクロン株がその後流行し、第6~8波となりました。オミクロン株は、それ以前のデルタ株までとは異なり、感染力は増える一方で毒性は弱くなりました。その結果、軽症患者の数が爆発的に増加し、小児をはじめ若年者は発熱はありますが自然回復する例が多くなりました。佐賀では2022年1月からオミクロン株流行が始まりました。当院は隔離室が3つあり発熱者に対応できる設計でしたので、当初から発熱者を受け入れてきました。コロナ検査を2022年1月から2023年02月18日まで、およそ4000件実施しましたので、これまでの経過をまとめてみました。

1.検査数は3944件でした。当院では1-5歳、6‐12歳の患者さんが多く、年齢中央値も5.67歳と幼小児の年齢になりました。

2.コロナ検査の陽性率は抗原検査、PCR検査ともに40%程度でした。コロナ流行期のため年齢があがるほど発熱者の陽性率が増え、19歳以上は65.9%がコロナ感染者でした。一方で1‐5歳の陽性率はわずか25.9%であり、幼小児は流行期でさえ4人中3人は違う感染症による発熱でした。

3.コロナ感染症の診療状況を振り返ると、2022年1月から8月の第6‐7波は、近隣以外からの患者さんも多くみられました。実際、かかりつけで検査ができない患者さんや、コロナ相談センターから案内された患者さんが多くあり、佐賀でも「検査難民」があることを痛感していました。また休日に小児の検査ができなかったため、休日明けの検査数が大変多くみられました。しかしその後は医療機関や薬局で実施される検査が増え、また佐賀市夜間休日こども診療所で検査が導入されたことで、7波の後半からは、当院での検査数は落ち着き、遠方からの患者さんが減りました。

4.当院から総合病院に紹介したコロナ感染症の患者さんは、小児は8名でした。呼吸障害を伴う患者さんはありませんでしたが、基礎疾患のある患者さんや、コロナ感染症に特徴的な小児多系統炎症性症候群(MIS-C)の患者さんがおられました。

5月8日から新型コロナウイルス感染症は、インフルエンザと同じ5類感染症として 取り扱われます。若い方には比較的軽症の感染症になりましたが、依然として感染力は強く、今後も9波以降の流行が懸念されます。

小児科医として新型コロナウイルス感染症をどのように診療していくのか模索していきましたが、こどもは様々な原因で発熱するため専門医として診療することが重要だと強く感じています。また新型コロナウイルス感染症が若年者では軽症とはいえ、重症となる場合も必ずあります。新型コロナウイルス感染症もそのほかの疾患も、分け隔てなく対応していくことが求められると思いますので、これまで同様の診療を続けていきたいと思います。