突然の嘔吐 ウイルス性胃腸炎(嘔吐下痢症)
ウイルスが原因で急な嘔吐や下痢を発症するものを急性胃腸炎といいます。症状から嘔吐下痢症とも呼ばれます。ウイルスは、一年中みられるアデノウイルスもありますが、ロタウイルスやノロウイルスといった冬季に流行するウイルス性胃腸炎が圧倒的に多いです。
潜伏期間は1~2日とされ、手から手にうつる接触感染のため、予防には手洗いや消毒が重要です。また吐物や便が空気中に広がり(エアロゾル)口から感染することもあるため、汚染したものを適切に処理することも大事です。大人にも感染しやすいため、家族内の伝搬には注意してください。通常は、数日~1週間で改善に向かいます。
症状は嘔吐や発熱であり、その後に下痢便を認めるようなりますが、下痢がない場合もあります。ノロウイルスは嘔吐が強い印象で、ロタウイルスは水様性下痢を生じやすい特徴があります。いずれも、「水分や食事をとることができない」、「嘔吐や下痢で水分が失われる」ことで、脱水症を生じやすくなります。脱水の症状は、眠りやすい、口や皮膚が乾燥する,尿量が極端に減る、などがみられます。
診断方法は、症状と迅速診断キットでできます。突然の嘔吐と流行状況、全身状態などからウイルス性胃腸炎と診断します。便から迅速診断キットを用いて、ウイルスを同定することも可能ですので、疑わしい場合はおむつの便を持参いただくと検査ができます。
ウイルス感染症ですので、特効薬はありません。吐き気止めや整腸剤を用いることがありますが、基本は脱水にならないよう、こまめな水分や食事の摂取をお家で行っていただきます。吐いた直後は口が渇くため水分を欲しがりますが、すぐに飲むと吐き気が強いため吐いてしまいます。お腹を1時間くらい休めて、与えてください。「吐いたら飲むな!」を心がけましょう。水分はイオン(お塩の成分)が含まれるミネラルウォーターが好ましいです。ふつうの水やお茶を与えすぎると電解質のバランスを崩すことがあります。目安として体重10㎏お子さんには、1回10-15mlを10-15分ずつの間隔で与えることから始めます。水分をとることができれば量を増やし、食事をチャレンジしてください。乳製品や刺激物(辛いものや炭酸など)は避けてください。吐き気止めは、吐き気が強いときに使用します。座薬と内服薬があり、乳幼児では座薬を使用することが多いです。こまめに水分を与えても嘔吐する場合に使用します。
病院から帰っても吐き続ける場合、元気がなくて顔色が悪い場合、唇が渇いて、おしっこが好きない場合は、点滴治療をすることがあります。お医者さんに相談してください。
登園、登校は、嘔吐や下痢が改善し、通常の食事が摂れるようになってからで、主治医の許可があれば行くことができます。1週間くらいが目安です。
・ウイルス性胃腸炎は、家庭で以下の対応が必要です。
1.家でゆっくり休み、こまめな水分補給を心がけてください。
2.吐いた直後は、吐き気が強いため飲ませずお腹を休めてください。
3.嘔吐や下痢のため体拭きを行って、清潔を保ちましょう。
4.嘔吐が続き、元気がない、脱水が疑われる場合は、早めに受診をしてください。
5.家族に同じような症状があれば、うつっている可能性があります。お医者さんに相談しましょう。