自粛期間における癒しのひととき−4

新型コロナウイルス感染症の自粛期間中とはいえ、仕事もそうですが、「しなければいけない」ことはありましたね.その日は、「頼んでいた物ができた」との連絡がありましたので、自家用車で有田まで向かいました.

「頼んでいたもの」とは、金継をした酒器でした.

私は学生の頃から陶磁器を見たり、買ったり、使ったりが大好きで、大人になってからはお気に入りの酒器でお酒を嗜んだりしています.陶磁器は割れるので、お気に入りや高価なものは「使わない」方もあると思いますが、私は「とことん使う」タイプです.

その酒器は、窯元から購入した十四代今泉今右衛門の盃でした.嫁の父が片付けてくれている時に、手を滑らせて落としてしまったのでした.父は何気に気を落としていたので、「父のためにもどうにかしたい」と今右衛門窯に相談したところ、金継師の方を紹介していただき、依頼したのでした.

連絡をとり午後に伺う予定でしたが、1時間ほど早く有田に到着してしまいました.時間をつぶせる場所はないか・・と考えていたら、「深川製磁 CHINA ON THE PARK」の看板がみえます.ここ10年以上は伺っていなかったので、足を運んでみました.

コロナ禍で客足がまばらなCHINA ON THE PARKでしたが、中は元気に営業されていました.近年私が伺っていない期間が長かったせいか、趣きのあった「忠次館」が、さらにレトロな雰囲気を醸し出していました.もちろん中に展示されている美術品や製品は素晴らしいものでした.

ふと階段横に目を向けると、ラベンダーの紫がきれいに並んでいます.ラベンダーの開花は5~7月ですので、ちょうどよい季節でした.そこで、畑に少しお邪魔をしました.畔が少し朽ちているところが長い時間を想像させます.畑の上まで綿のように紫が連なっています.以前みたラベンダー畑と同じ風景でしたので、職員の方がお手入れを続けられていることと感じました.来てよかったなあと思える一瞬.

コロナ感染症を避けるためお茶は控えて、CHINA ON THE PARKを後にしました。酒器を受け取り拝見したところ、紫陽花を薄墨でまとめた盃は、割れたところが銀色で継がれ、きれいな形に戻っていました.銀色が幾何学的模様をなぞっているかのようなデザインにも見えます。金継は初めて頼みましたが、愛着のある盃が違う雰囲気を纏うように変化するものだと感じました.

大変うれしかったので、懇意にしていただいてる今右衛門窯東京支店の今泉善雄さんに、写真で報告しました.そこで一言「よくできたね.それにしても本当に気持ち良いほど割ってしまったのね~」とのこと.この酒器は大事にします.