小児腎臓病の森 No.1~胃腸炎で入院したこどもは、腎臓も弱っている~

おしっこを作る腎臓は体の中で大事な仕事をしていますが、小児科の専門医は少ないためよく知られていません。私が日ごろ聞いたり、読んだりしたことを、徒然なるままに紹介したいと思います。

急性胃腸炎は、ロタウイルスやノロウイルスのような嘔吐下痢症があります。また夏は大腸菌などの細菌性胃腸炎として、子どもたちによくみられる感染症です。入院治療になることもありますが、点滴などで元気になる子が多いのです。

しかし、実は腎臓が弱って入院期間が長くなるような子が結構いますよ、という報告です。Pediatric Nephrology volume 36, pages1627–1635 (2021)

今回イタリアで、急性胃腸炎のため入院した114名の小児(平均2.9歳)を調べたところ、28名(約25%)に腎障害がみられました。

透析治療をするような子はいませんでしたが、腎機能が正常の50%未満になった子が4名もいました。残りの24名も正常の50~75%の腎機能に弱っていました。

このように腎機能が悪い子は、入院期間が長く、10日以上入院していました。

また胃腸炎に伴う脱水や下痢などで生じるアシドーシス(体が酸性に傾くことで、体がきつい状態)が、腎機能が悪い子には多くみられていました。

嘔吐や下痢があるときには、ナトリウムを含む水分を少量から少しずつ増やしながら与えてください。

脱水を防ぐことで、入院や腎障害といった合併症を予防できます。もちろん嘔吐や下痢が強い場合は、点滴をすることもあります。

体が病原菌に打ち勝ち、症状が改善するまでが大事ですね。