小児腎臓病の森 No.2~腎臓が1つだけの子どもは、隠れた高血圧になりやすい
おしっこを作る腎臓は体の中で大事な仕事をしていますが、小児科の専門医は少ないためよく知られていません。私が日ごろ聞いたり、読んだりしたことを、徒然なるままに紹介したいと思います。
腎臓は、おなかの中に2つあります。しかし何らかの理由で1つしかない、もしくは1つだけの機能になってしまう「片腎」である子どもは、出生500~800人に一人はあります。これは超音波をしないと発見できない病態です。
片腎の子どもは元気ですので、私が医者になった頃は、発見されても経過観察もせずにお終いにされていました。それから20年以上診療すると、尿失禁がでてきたり、肥満になる子供、経過の中で腎機能が悪くなる子どもがいましたので、1年に1回は健康診断に来てもらうようになりました。
ここで紹介する報告は、片腎の子どもには高血圧が隠れているので注意しなさいというものです。
ちなみに血圧には、心臓が収縮する時の収縮期血圧、心臓が拡張する時の拡張期血圧があります。
トルコの先生たちが、5~18歳の子どもたちについて、次の4つのグループの血圧と塩分摂取量を評価しました。(Pediatr Nephrol. 2021 Jul;36(7):1833-1841. )
グループ1:生まれつき片腎の子ども43名
グループ2:生まれた後に片腎になった子ども11名
グループ3:腎臓が悪くなる病気で片腎と同じ腎機能になった子ども76名
グループ4:正常の子ども20名
結果は、全体の12.3%に高血圧があり、特に夜に強いことが分かりました。グループ1は収縮期/拡張期ともに血圧が高い傾向で、グループ3は拡張期血圧が高い傾向でした。グループ1では塩分摂取量が多くなると、24時間の収縮期血圧や平均血圧が高くなりました。グループ1の中でも、塩分摂取量が多い子どもは、少ない子どもよりも拡張期血圧が高くなりました。
結論は、生まれつき片腎の子ども、腎機能が悪くなって片腎と同じ腎機能になった子どもは、気づかれずに高血圧となっていることがあります。生まれつき片腎の子どもや、塩分摂取量が増えた時には、血圧が高くなります。
血圧は正常の子どもよりも15-29mmHgくらい高くなっていました。また塩分摂取量は各グループで5.3~7.05g/日くらいでした。これよりも多いと血圧が上がるようです。日本成人は9g/日を推奨されていますので、少なくとも成人と同じくらい塩をとらないようにしたいですね。